さて、突然だがあなたは ”女奴隷” と聞いてどんなイメージを持つだろうか、きっと良いイメージ持つ人はあまりいないだろう。それもそのはずで多くの作品では女奴隷とは哀れな立場で描かれるものだからである。昨今人気を博しているなろう系小説やよくある異世界モノのラノベでも一つの王道パターンとなっているのが俺強な主人公が女奴隷を助け一緒に暮らす、といったものである。ここで考えてみてほしいのだが、本当に歴史の中で女奴隷という存在はずっと哀れまれる存在だったのであろうか。確かに中世ヨーロッパやイスラーム世界では彼女らは性奴隷として用いられることも多かったが、例えば唐代以降の中国では女奴隷を買うということは極めて一般的な嫁探しの手段であったし、イスラーム世界でも一般の女性ができない舞踊や演奏、料理といった職務に従事することも珍しくなかった(一般の女性は人前で肌を露出できない為)。唐もイスラームもともに6世紀以降であるが、ではそれ以前の女奴隷の扱いはどんなものであったのか、ここではポンペイ遺跡を中心として古代ローマ時代の扱いについて書いていきたいと思う。
↑これはその王道パターンを書いたラノベである
ポンペイの街の遺跡はとても保存状態がよく、なんと当時の落書きまで残っている。その中に当時の女奴隷に関するものがあったのでここに書いておく。
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織物師スケスウスは女奴隷のイリスに惚れている が彼女はあいつのことなど気にかけていない
それなのに奴は彼女のお情けを請うている
恋敵これをしるす さらばだ
(スケスウスの返事)
お前はやきもちで頭にきているな
美男子、女殺し、優男のおれと張り合うのはよすんだな
(初めの男の返事)
もうなんも言うことも書くこともしねぇぜ
おめぇはイリスに惚れ、イリスはおめぇなんぞに見向きもしない
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ここで注目して欲しいのは二人のローマ人が言い争っているのだが、どちらが女奴隷を所有するのかではなく、イリスの気がどちらに向いているのかについて言い争っている点だ。つまり当時は女奴隷といえどパートナーの選択の自由があり、また、ローマ人も自由民だからと言ってみだりに女奴隷に手を出すことが出来なかったとは考えられる。
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